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生活圏15km程度を手軽に移動できる乗り物として、一般原付、電動アシスト自転車、特定小型原付があります。
ただ、価格や維持費(ランニングコスト)、速度や走りやすさ、駐車のしやすさなどはそれぞれ異なります。そこで、一般原付(原付一種)、電動アシスト自転車、特定小型原付の違いをこうしたさまざまな観点から検証してみました。ぜひ、参考にしてください。
最初に抑えておきたい原付とは?一般原付と特定小型原付の違いをチェック
原付とは?
原付は、「原動機付自転車」の略。自転車はペダルをこがないと走行できませんが、原付はスロットルをひねるなどの操作により、自動走行が可能な乗り物です。
原付は、次の2つに分かれます。
- 125c以下の一般原付
- 16歳以上なら免許不要で乗れる特定小型原付
道路運送車両法では排気量125cc以下(電動機の場合は定格出力1.0kW以下)のものを「原動機付自転車」としています。さらに一般原付は、次の2つに分かれます。
- 第一種原動機付自転車(原付一種):排気量50cc以下(電動機の場合は定格出力0.6kW以下)
- 第二種原動機付自転車(原付二種):排気量50ccを超え125cc以下
関連記事:【初心者必見】知っておくべき8つの原付ルールを徹底解説!
原付二種は、「小型自動二輪車」とも言われ、その法定速度は時速60kmです。原付一種の法定速度が時速30kmなのに対し、原付二種はサイズ感や速度が自動車に近いものとなってきます。
そのため、この記事では電動自転車や特定小型原付との比較対象になりやすい「原付一種」を取り上げて解説します。
原付と特定小型原付の違いとは?
出典:警視庁|特定小型原動機付自転車に関する交通ルール等について
特定小型原動機付自転車とは、次の基準を全て満たすものをいいます。
- 車体の大きさは、長さ190センチメートル以下、幅60センチメートル以下であること
- 原動機として、定格出力が0.60キロワット以下の電動機を用いること
- 時速20キロメートルを超える速度を出すことができないこと
- 走行中に最高速度の設定を変更することができないこと
- オートマチック・トランスミッション(AT)機構がとられていること
- 最高速度表示灯が備えられていること
これらに加え、次の3点も必要となります。
- 道路運送車両法上の保安基準に適合していること
- 自動車損害賠償責任保険(共済)の契約をしていること
- 標識(ナンバープレート)を取り付けていること
参考:警視庁|特定小型原動機付自転車に関する交通ルール等について
上記の条件を満たした特定小型原付には、16歳以上であれば運転免許不要で乗ることができます。満たさない乗り物は原付となり、運転免許が必要となるため、注意が必要です。
原付一種、電動アシスト自転車、特定小型原付の違いをコストなどから徹底比較!
では、原付一種、電動アシスト自転車、特定小型原付の違いを購入価格、維持費(ランニングコスト)、航続距離など各項目から比較し、検証していきましょう。
原付一種には、エンジンを燃料とするバイク(エンジンバイク)、電力で動く電動バイクの2つがあります。
電動バイクについて詳しくは、こちらをご覧ください。
関連記事:原付バイクと電動アシスト自転車、どっちを選ぶ?ポイントを紹介
関連記事:電動バイクの知られざるメリット・デメリットをご紹介
価格:電動アシスト自転車の方が相場は安い
まず、購入する場合の価格相場としては、電動アシスト自転車が10万円〜15万円程度となっており、最も手頃です。
ガソリン車の原付バイクの相場は、15万円程度、電動バイクの相場は20万円程度、特定小型原付は10万円〜30万円程度となっています。さらに原付・特定小型原付は、購入時に追加で自賠責保険の費用(3,000円〜7,000円程度)もかかります。
ただし、電動バイクは排気ガスを出さないエコな乗り物として、購入時に行政から補助金がもらえる場合があるため、お住いの地域の補助金制度を確認してみてください。
維持費:ガソリン代がかかる原付より充電OKの電動アシスト自転車
維持費を算出した結果、電動アシスト自転車が最も安く済み、次いで特定小型原付、電動バイクとなり、ガソリン代が掛かるガソリン車の原付が最も掛かることとなりました。
下記を想定し、算出してみました。
・通勤片道15km、休日はお出かけで往復40km、1ヶ月920km走行
通勤片道15kmの場合、平日往復30km×週5日=150km、休日お出かけで往復40km×週2日=80kmとすると、1週間の走行距離は230kmとなります。
さらに1ヶ月分の走行距離目安として、230km×4週=920km/月程度とします。
ガソリンバイク、電動バイク、特定小型原付、電動アシスト自転車のそれぞれで維持費をみていきましょう。
ガソリンバイクの場合
ガソリン原付の場合、満タンで800円程度、1リットル当たり30〜40km程度走行できます。
一般的なガソリン原付の燃費40km/lとして、920km走行するのに必要なガソリンは23リットルです。レギュラーガソリンの1リットル当たりの価格を170円とすると、ひと月に必要なガソリン価格は、170円×23リットル=3,910円になります。
これを年間で試算した場合の燃料費は36,000〜60,000円程度です。ここに車両税2,000円と自賠責保険6,910円が掛かり、年間の維持費は44,910円〜68,910円となります。
また、走行する上で燃料をガソリンに依存するため、給油のたびにガソリンスタンドに行く必要があります。費用コストだけでなく、こうした時間コストも日常的に利用する上では重要ですね。
電動バイクの場合
電動バイクの場合、1kmあたり0.5〜1.5円程度の電気代が掛かります。そのため、ひと月分に換算すると1.5円×920km=1,380円程度となります。年間試算の電気代は、12,000〜24,000円程度です。
特定小型原付の場合
特定小型原付には、電動キックボードとバイク型など2輪タイプのほか、3輪タイプ、4輪タイプがありますが、そのうち電動キックボードで試算してみます。
関連記事:「電動キックボード以外にも移動に便利!歩道6km/h走行可能な乗り物」
一般的な電動キックボードで、1回の充電で電気代が13円程度となり、35km走行できます。1kmあたり0.37円となりますので、1週間の走行距離が230kmの場合は85.1円。1ヶ月では340.4円、年間では340.4円×12=4,084円となります。あくまで試算ですので、実際には5,000円〜10,000円程度をみておくと良いでしょう。
さらに電動キックボードは自賠責保険に加入する必要があり、年間6,650円、軽自動車税が年間2,000円掛かります。任意保険に入る場合はこれにプラスして年間1~3万円程度掛かります。
そうすると、維持費の合計金額は、電気代10,000円程度と8,650円を合わせて18,650円程度~となります。
電動アシスト自転車の場合
電動アシスト自転車は、メーカーやバッテリーの種類によって異なりますが、3.5時間~8時間の充電で、電気代は約8〜21円程度。一般的な1ヶ月の充電の電気代は500円〜1,000円程度です。年間試算の燃料費は、6,000〜12,000円程度です。
実は、ペダル付電動バイクには電動バイクと自転車を切り替えて二刀流で使用できる タイプ(glafitのGFR-02)もあります。ガソリンを使わずにバイクとして使用でき、自転車としても使えるものもあり、原付と自転車の両方が楽しめる乗り物です。
こうした二刀流タイプを「モビチェン」と言いますが、モビチェンについてこちらの「モビチェンってなに? 電動バイク(原付1種)と自転車を切替えて使う、日本初の二刀流バイクは何故できたのか?」で解説しています。ぜひ参考にしてください。
速度:一般原付の速度が圧倒的勝利
走行速度を比べると、原付が圧倒的に速いです。一般原付はガソリン車・電動タイプともに、公道を30km/hで問題なく走行できます。
一方、電動アシスト自転車の場合は、24km/hまでしかアシストが効かないように法律で制限されています。また、電動アシスト自転車はあくまでも「自転車」なので、走行速度は人力の自転車と同程度と認識しておきましょう。
速度が速ければその分移動時間も短縮されるため、スピーディーに移動したい場合は一般原付(ガソリン車・電動バイク)がおすすめです。
なお、原付は排気量50cc超125cc以下のものは、免許分類で「原付二種」つまり小型自動二輪車となります。原付二種は法定速度が時速60km以下、二段階右折が不要、二人乗りも可能ですが、高速道路は走行できません。
免許:一般原付は免許が必要、電動アシスト自転車は不要
道路交通法の車両分類では、電動アシスト自転車はあくまで「自転車(軽車両)」の区分であるため、乗る際には免許は不要です。
一方、電動バイクに乗る場合は、定格出力に応じた運転免許が必要となります。免許分類はそれぞれ、定格出力0.6kw未満は原付一種、0.6kw〜1kmまでが原付二種、20kw未満は普通自動二輪、20kw以上は大型自動二輪です。
定格出力 | 道路交通法による免許の種類 |
---|---|
0.6kW未満 | 原付一種 |
0.6~1kW | 原付二種 |
20kW未満 | 普通自動二輪 |
20kW以上 | 大型自動二輪 |
免許について詳しくは「電動バイクに乗るのに必要な免許は?車検が不要って本当?」で解説していますので、ご参考ください。
ペダルのついた小型電動バイクは一見すると電動アシスト自転車と似ていますが、免許が必要です。免許証を携帯せずに乗ってしまう人もいますが、違法行為となってしまうので注意してください。
また、漕がなくても進める機能が搭載されているにもかかわらず、電動アシスト自転車として販売されている場合もありますが、これは違法な種類です。このように漕がずに進むことができる二輪車は、本来電動バイクとして扱われるべき乗り物ですので、特に注意してください。
ただ、原付でも「特定小型原付」なら16歳以上の場合、免許不要・ヘルメット努力義務で運転できます。
特定小型原付については「電動キックボード法改正!2023年7月1日からの新ルールを解説!」をチェックしてください。
「特定小型原付=電動キックボード」というイメージが強くありましたが、glafitは2024年3月14日(木)に電動サイクル『NFR-01Pro』を発表いたしました。
現在期間限定で先行販売を受け付けております。気になる方は、ぜひ「【免許不要の原付】電動アシスト自転車を超えるglafitバイクNFR-01Pro」をチェックしてみてくださいね。
航続距離:機種によるが最長距離では原付に軍配
機種やモデルによって異なりますが、1回あたりの走行最長距離(航続距離)を比較すると、原付に軍配が上がります。
種類によって走行距離は異なりますが、ガソリン原付は満タンで150km以上、電動バイクは1回の充電で走行できる最長距離は40〜100km、電動アシスト自転車の最長走行距離は130km程度ですが、人力的な負担を考えれば、50kmを目安としておいたほうがいいでしょう。
電動アシスト自転車は自分で漕がないと進まないので、車種によっては200kmという長い距離を走行できたとしても、安全面や身体への負担を考慮すれば、移動することが目的の場合は、電動バイクがおすすめです。
電動バイクや電動アシスト自転車は充電切れに注意しましょう。しかし、電動バイクの中には充電が切れても自転車として使える電動バイクもあります。
体力:電動アシスト自転車は漕ぐのに体力を使う
一般原付や特定小型原付で走行する場合は人力不要ですが、電動アシスト自転車は漕ぐのに体力を使います。
電動アシスト自転車は人力で漕ぐ力を電動でサポートしてくれるだけなので、通常の自転車同様にある程度は足の力を必要とします。また、電動アシスト自転車は漕ぎはじめにペダルが重くなるものもあるため、普通の自転車よりは楽ですが、体力は必要であると認識しておきましょう。
保険:保険の価格はやや一般原付の方が高い
一般原付・特定小型原付は購入する際に、保険も掛かることを念頭に置いておきましょう。もしもの時に備える保険を比べてみると、一般原付の方が高くなることが一般的です。
まず、原付は法律で定められている自賠責保険への加入が義務付けられています。自賠責保険は全国一律(沖縄、離島を除く)の価格です。
公道を走行する際は、自賠責保険に加えて任意保険にも加入しておいた方が安心でしょう。保険会社やプランによって価格差がありますが、基本的には対人対物無制限のプランに加入することが一般的です。自動車をお持ちの場合は、自動車保険で加入済みの保険の付帯で入れる場合もあるのでご確認ください。
一方、電動アシスト自転車の場合は、自転車事故に備えた「自転車保険」に加入できます。加入を義務化する都道府県も増えてきているため、お住いの自治体の情報を確認してください。
このように、電動バイクの場合は「自賠責保険」「任意保険」に、電動アシスト自転車の場合は「自転車保険」に加入すると考えると、電動バイクの保険料の方が高くなります。
駐車スペースの確保のしやすさ:電動アシスト自転車の方が有利
最後に駐車スペースの確保のしやすさは、圧倒的に電動アシスト自転車のほうが有利です。自転車のため車体がコンパクトで、自宅・店舗の駐車場・駐輪場などさまざまな場所で停めやすいでしょう。
また、一般原付・特定小型原付は排気量50cc以下の場合、自動車に含まれないため、原則として駐車場ではなく駐輪場に駐車することとなっています。ただ、50cc以下でも車体が横に広い分、自転車より駐車スペースを確保しにくいと言えるでしょう。
電動アシスト自転車のほうが停めやすいうえ、原付に乗ると、道路走行中「自転車を除く一方通行」もあり、迂回する必要があることもあります。電動アシスト自転車は、駐車がしやすく、移動がしやすいのがメリットです。
ただ、原付の中には、「自転車」に切り替えられる電動バイクもあります。迂回しなければいけないとき、駐輪場にスマートに停めたいときもこちらの電動バイクを使えば楽ですよ。
原付(電動バイク)と自転車にそれぞれ切り替えて走行できるGFR-02
結局、どれを選ぶと良い?選ぶポイント
結局、どれを選ぶと良いのか、ポイントはまず距離で考えると良いでしょう。10km以上を移動するとなると、電動アシスト自転車は40〜50分程度掛かりますし、電動キックボードも10kmを超えると機種によっては充電が気になる場合もあるでしょう。
快適な乗り心地や体力の面から考慮すると、片道10kmを超える移動には原付がおすすめです。詳しく解説します。
片道5km未満の移動なら特定小型原付・電動アシスト自転車がおすすめ
片道5km未満の移動なら電動キックボードをはじめとする特定小型原付、電動アシスト自転車がおすすめです。
体力を使いたくない場合
電動キックボードをはじめとする特定小型原付がおすすめです。ただし、電動キックボードを利用する際、急な坂道がある場合には注意が必要です。
関連記事:「電動キックボードで坂道の上り下りはできる?(注意点、実証結果あり)」
また、電動キックボード以外の特定小型原付には、免許不要の電動バイクもあります。ペダルをこがずに走行できるため、体力に自信がない場合にもおすすめです。
免許不要の電動バイク:NFR-01 Pro
維持費を抑えたい・荷物を載せたい
維持費を抑えたい場合・荷物を載せたい場合には、カゴを取り付けられる電動アシスト自転車がおすすめです。
片道10km程度の移動なら原付がおすすめ
片道10kmとなると、体力面・乗り心地を考えると、原付バイクを考えた方が良いでしょう。
たとえば電動キックボードの場合は立ち乗りになるので、10kmを超える移動となると立ちっぱなしになるためあまり向いていません。
ただ、原付バイクに乗るとなると免許が必要なので、免許を持っていない人には中長距離の移動ができる特定小型原付を選択肢として考えると良いでしょう。
免許を持っていない場合は
体力に自信がない人は、免許不要で乗れる特定小型原付がおすすめです。特定小型原付にはさまざまなタイプがあり、電動キックボード以外にも2輪タイプ、3輪タイプ、4輪タイプがあります。
関連記事:「電動キックボード以外にも移動に便利!歩道6km/h走行可能な乗り物」
また、先に紹介したNFR-01Proは免許不要で中長距離の移動もしやすいです。坂道の移動も楽にでき、1回充電あたりの航続距離は46㎞となっています(定地走行試験値)。
ぜひ、近距離・中長距離の移動にご活用ください。
まとめ
この記事では、生活圏を手軽に移動できる、原付、電動アシスト自転車、特定小型原付の3種類の乗り物の購入価格や維持費、航続距離などについて検証してみました。
購入価格、維持費のうえでは電動アシスト自転車が最も安く、航続距離においては原付が有利となりました。特定小型原付においては、免許を持っていない方も使える点がメリットで、目的に合わせてタイプを選ぶと良いでしょう。
どれを選ぶかについては、まず走行距離をもとにし、片道5㎞程度なら電動アシスト自転車や電動キックボードをはじめとする特定小型原付を、片道10km程度なら原付もしくは中長距離の移動が可能な特定小型原付を選ぶと良いです。坂道が多いなど走行する道によっても乗り心地は変わってきますので、ご自身の移動状況やライフスタイルに応じて考慮しましょう。
購入前には必ず試乗し、ご自身の体格に合ったものや乗りやすさをもとに選んでください。
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