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近年、電動モビリティを取り巻くルールが大きく変わっています。2025年2月28日には、ペダル付き電動バイクなどの安全対策を目的に、「一般小型原付」という新しいカテゴリーが道路運送車両法に基づき新設されました。
一方、特定小型原付は、2023年7月1日の道路交通法改正施行により誕生し、一定要件を満たす電動バイクや電動キックボードなどが16歳以上であれば免許不要で運転できるようになっています。
この記事では、「一般小型原付」と「特定小型原付」の違いを比較しながら、一般小型原付とはどのような乗り物なのかをわかりやすく解説します。
一般小型原付とは?特定小型原付との違い
「一般原付」とは、原付一種と原付二種をまとめた総称です。このうち一般小型原付は、原付一種に含まれ、電動車かつ小型・低出力に限定された区分です。原付一種は50cc以下または125cc以下かつ出力4.0kW以下のバイクを指し、その中でも特に、ペダル付き電動バイク等であり、定格出力1kW以下かつ小型軽量のものを一般小型原付と呼びます。
構成イメージ
特定小型原付、原付一種との違い
一般小型原付は、電動でありながら原付免許または普通自動車免許で運転でき、最高速度30km/hで公道を走行することができます。特定小型原付のように免許不要(16歳以上)ではなく、ヘルメットの着用も義務です。
また、特定小型原付と比べて車体のサイズや出力が大きく、バイク型やペダル付き電動バイクなど、より実用性の高いモデルが多いのが特徴です。一方、原付一種と比べると排気量ではなく出力(1.0kW以下)で区分される点が異なり、電動車特有の構造や保安基準が適用されます。
このように、特定小型原付と原付一種の中間に位置するような性能・制度設計となっており、「電動×原付免許」で乗れる新しいカテゴリーとして整備されています。
比較:一般小型原付・特定小型原付・原付一種
一般小型原付 | 特定小型原付 | 原付一種 | |
---|---|---|---|
排気量・出力 | 電動、定格出力1.0kW以下 | 電動、定格出力0.6kW以下 | 排気量50cc以下または 125cc以下&出力4.0kW以下 |
免許要件 | 必要 (原付免許または普通免許) | 不要(16歳以上) | 必要 |
速度上限 (法定速度) | 30km/h | 20km/h (歩道モード6km/h) | 30km/h |
車体制限 | 長さ1.9m以下 重量55kg以下 | 長さ1.9m以下 幅0.6m以下 | 長さ2.5m以下 幅1.3m以下 高さ2.0m以下 |
ナンバー・保険 | 必要 | 必要 | 必要 |
ヘルメット | 着用義務あり | 努力義務 | 着用義務あり |
主な対象 | 電動バイク ペダル付電動バイクなど | 電動キックボードなど | 50ccバイク 小型バイク |
一般小型原付も対象「性能等確認制度」の概要
一般小型原付・特定小型原付の両方は、国の「性能等確認制度」の対象です。
これは、公道を安全に走行できる車両であるかどうかを確認する制度で、国交省が認定した機関により、バッテリーの安全性や段差走行などの走行安定性に加え、道路運送車両の保安基準に適合しているかも確認されます。適合した車両には「性能等確認済」の表示が義務付けられており、購入時や利用時の重要な目印となります。
確認済の車両は、今後、国土交通省のウェブサイトで順次公開される予定です。現在は、特定小型原付についてのみ確認済車両の一覧が掲載されており、一般小型原付についても将来的に同様の形で公表されると見込まれます。
参考:
特定小型原動機付自転車について(国土交通省)
→ ページ内の「保安基準適合性等が確認された特定小型原動機付自転車の型式」からPDFリストにアクセスできます。
一般小型原付の特徴まとめ
- 免許が必要:原付免許または普通自動車免許で運転可能
- 小型・軽量な電動バイク:長さ1.9m以下、重さ55kg以下に制限
- 維持費が安い:電動車両であるため、燃料費が安く、オイル交換などの維持管理が不要です。特定小型原付と同様に、ガソリン車よりも日常の維持コストを抑えられます。
- 法令上の義務:ナンバー取得、自賠責保険加入、ヘルメット着用が義務
一般小型原付の交通ルールは?
一般小型原付は、原付一種に分類されるペダル付き電動バイクで、特定小型原付とは異なる交通ルールが適用されます。
- 免許と年齢制限:運転には原付免許または普通自動車免許が必要であり、16歳以上で取得可能です。
- 速度制限:法定速度30km/h
- 主な走行ルール:車道の左側を通行し、歩道や自転車専用道の走行はできません。交差点によっては、二段階右折が必要です。
- ヘルメット:乗車用ヘルメットの着用が義務付けられています。
- 保険:自賠責保険への加入が必要です。
- ナンバープレート:市区町村でナンバープレートの交付を受ける必要があります。
- 税金:軽自動車税(年額2,000円)が課税されます。
- 二人乗りの可否:一般小型原付では二人乗りはできません。
なお、特定小型原付は、16歳以上であれば免許不要で運転でき、最高速度20km/h、全幅60cm以下といった厳しい制限があります。
参考:
一般原動機付自転車の車両区分の見直しについて|警察庁Webサイト
新基準について|埼玉県警察
一般小型原付ができた背景
なぜ新しい区分が必要だったのか?
2025年11月からは、原付一種(50cc以下)にも強化された排出ガス規制が適用されることになっています。しかし、小排気量エンジンでは新基準への対応が技術的にもコスト的にも難しく、多くのメーカーが「50ccバイクの生産継続は現実的でない」と判断しました。
そこで、排気量ではなく「最高出力」に着目し、125ccクラスでも出力を原付一種相当(4.0kW以下)に抑えれば、原付免許で運転できるようにしよう、という制度見直しが行われました。
この見直しにより、従来の50cc原付に代わる新しい原付一種の枠組みが整備され、出力制限付きの125ccバイクや電動バイクが登場する道が開かれたのです。
一般小型原付の創設と制度の整備
一方で、これまでもペダル付き電動バイクは原付一種として扱われていましたが、電動アシスト自転車と誤認し、一般利用者が「ナンバープレートや自賠責保険が不要」と誤解したり、「自転車と同じように歩道を走れる」といった誤った使い方をしてしまうケースも多く、安全性や制度上の明確化が課題となっていました。
そこで新たに整備されたのが「一般小型原付」というカテゴリーです。これは、電動かつ出力1.0kW以下、小型・軽量であることを条件とした区分であり、特定小型原付(キックボードなど)や従来の原付とは異なる独自の位置づけとなっています。
この区分の創設に合わせて、「性能等確認制度」や「販売ガイドライン」も整備され、安全性・保安基準を満たした車両だけが適正に流通・利用される仕組みが構築されました。
また、特定小型原付が2023年に新設されたことをきっかけに、電動モビリティに関する制度整備が本格化しました。違法なペダル付き電動バイク(いわゆる電動モペッド)の流通や利用が社会問題となる中で、安全性や走行安定性を確保した電動車両の普及を目的に、「性能等確認制度」と「販売ガイドライン」が導入されました。こうした制度整備の流れの中で、一般小型原付という新たな区分が創設され、公道を安全に走れる車両の明確な枠組みが整備されました。
一般小型原付がおすすめな人は?
日常使いに向いている人
一般小型原付は、日常生活の短距離移動にぴったりの乗り物です。
たとえば「自宅から駅まで」「通勤・通学」「近所の買い物やジム通い」など、半径5km圏内の移動が多い人には特におすすめです。
ガソリンスタンドに行く必要がなく、自宅のコンセントで充電できるのも手軽さのポイント。
騒音も少なく、エンジンオイルの交換も不要なため、バイク初心者でも扱いやすいのが特徴です。
趣味・レジャーで使いたい人
折りたたみが可能なモデルも多いため、車に積んでレジャー先で使うのにも適しています。
キャンプ場や観光地でのちょっとした移動、釣り場へのアクセス、カフェ巡り、ポタリング撮影など「+αの移動手段」として活躍します。
観光地の駐車場に車を止めたあと、電動バイク「GFR-02」のような一般小型原付で周辺を自由に回る、といった使い方も可能です。
購入・利用の流れ(glafit 電動バイク「GFR-02」を例に)
一般小型原付は、警察庁・国土交通省が定めた「販売ガイドライン」に沿って販売されます。これは、適切な免許を持つ人に安全な車両が届くようにするためのルールです。たとえば、販売店が購入者の免許を確認したり、安全性が確認された車両だけを販売したりすることが求められています。
一般小型原付を購入して乗るためには、いくつかの手続きが必要です。
ここでは、glafitの電動バイク「GFR-02」を例にして、購入から利用までの流れを紹介します。
電動バイク「GFR-02」とは?
電動バイク「GFR-02」は、1台で電動バイクと自転車の車両区分を切り替えて使える二刀流モビリティです。 独自システム「モビチェン」機構でナンバーを覆うと、合法的に自転車として走ったり駐輪したりできます。 コンパクトな車体は日常使いに適しており、街乗りや通勤にも便利な1台です。
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販売ガイドラインに基づく購入の流れ(電動バイク「GFR-02」を購入する場合)
- 免許証の確認(運転免許の所持をメール等で確認)
- スタートアップキット受け取り(ナンバー登録などの書類を同梱)
- 市区町村でナンバープレート取得(軽自動車税申告を含む標識交付申請が必要)
- コンビニ等で自賠責保険に加入し、保険標章ステッカーを受け取る
- PCやスマホからユーザー登録申請を行う
- 登録確認後、車両発送・納車
- ナンバープレートを取り付けて利用開始!
注意点
- 運転には原付免許または普通自動車免許が必要
- ナンバープレート未取得では走行できない
- 自賠責保険未加入での運転は禁止
- バッテリー切れ時は原付モードでの走行不可(モビチェン搭載時は自転車モードに切替可能)
- 適切な性能等確認を受けた車両であること(確認済表示があるか)も購入判断の重要な基準となります
特に、ナンバープレート未取得と自賠責保険未加入での運転は罰則規定があるので注意が必要です。glafitではナンバープレートと自賠責保険の加入が確認できないと、車体が発送されない仕組みとなっています。なお、電動バイク「GFR-02」は「性能等確認制度」が整備される以前から販売されているため、申請を受けなくてもよい車体であるとされています。
まとめ
一般小型原付は、排ガス規制強化による車両区分の見直しと、電動モビリティの適正管理のために新設されたカテゴリーです。
一般小型原付は、原付免許または普通免許が必要で、最高速度30km/h、定格出力1.0kW以下、車体サイズは長さ1.9m以下、重量55kg以下に制限された電動モビリティです。実用性の高いペダル付き電動バイクなどが多く含まれ、より幅広い日常利用に対応できる設計となっています。
一般小型原付は「性能等確認制度」という仕組みの対象になっています。これは、バッテリーの安全性や段差走行時の安定性に加え、道路運送車両の保安基準(灯火類や制動装置などに関する基準)を満たしているかどうかを確認する制度です。確認された車両には「確認済マーク」がつきます。ただし、このマークがない車両でも、法律に沿って安全に作られていれば走行できます。たとえば、電動バイク「GFR-02」には「確認済マーク」はありませんが、ルールに沿って安全に設計されているため販売可能です。
一般小型原付に乗るには、ナンバープレートの取得、自賠責保険への加入、ヘルメットの着用、そして免許証の携帯が法律で決められています。これらの手続きをきちんと行ってはじめて、公道を安全に走ることができます。
一般小型原付は、新しい移動手段というより、「正しく理解して、安全に便利に乗るために作られた新しいカテゴリー」です。
ぜひ自分の用途に合った一台を選び、安全に快適な移動を楽しみましょう!
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