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2022年12月23日(金)に国土交通省(以下、国交省)から、道路運送車両の保安基準に「特定小型原動機付自転車の保安基準」を追加し、特定小型原動機付自転車に適用される保安基準の項目等が定められました。
2023年4月に道路交通法が改正されましたが、対応する道路運送車両法が公布・施行(一部)され、2024年7月の改正道交法施行に向け、特定小型原動機付自転車(以下、特定原付)について詳しく解説していきます。
道路交通法と道路運送車両法の両方で、特定原付のルールが決定
2022年4月に「電動キックボード等の新しい法律ができ、16歳以上は免許不要・ヘルメットは努力義務」という事で、大きく報道されました。皆さんもテレビや新聞で一度は目にされたのではないでしょうか?
では、今回公布・施行(一部)された法律は、いったい何が違うのでしょうか?
道路交通法は、みんなが運転するのに守るべきルール(交通ルール)で、警察庁が管轄しています。例えば、最高速度は20km/hや、16歳以上であれば免許がなくてもよい、などという事を決めています。
特定原付についての道交法改正の内容は以下にまとめていますのでご確認ください。
関連記事:電動キックボード等に特定小型原付区分が新設:免許不要、ヘルメットは努力義務に!
こちらは、ルールの周知に時間もかかりますので、施行は2024年春ごろまでと少し先の話になります。
では、今回の道路運送車両法は何かというと、特定原付に区分される電動キックボード等の車両の安全基準を決めるもので、管轄は国交省になります。具体的には、「保安基準」といわれ、特定原付に限らず自動車や二輪車などすべての車両において、その車両区分ごとに保安基準が決められています。
ちなみに今回の特定原付の保安基準などはどうやって検討されたかというと、有識者等から構成される車両安全対策検討会の下に「新たなモビリティ安全対策ワーキンググループ」が設置され、特定原付に区分される電動キックボード等の車両の安全対策の検討会を複数回実施しています。
4月に公布された道路交通法で「特定原付」という車両区分が新設され交通ルールは決められましたが、今回はこの「特定原付」に対応する道路運送車両法で車両の保安部品などが決められたという事になります。
特定原付の保安基準とは?必要な保安部品などを解説
今回の改正は大きくいうと2つあります。
①特定原付の定義と保安基準についてと、②特定原付の性能等確認制度についてになります。
それぞれを、詳しく見ていきましょう。
①特定原付の定義と保安基準について
まずは、新設される「特定原付」の車両の定義を簡単にまとめてみます。
・電動機の定格出力が 0.6kW 以下
・長さ 190 ㎝、幅 60 ㎝以下
・最高速度 20km/h 以下
・特定原付に必要な保安部品を装着
となっています。
また、表のように、特定原付以外のものは一般原動機付自転車(以下、一般原付)と呼ばれるようになります。
ここには、車両の形状についての決まりはありません。
メディアなどで電動キックボードの法律という表現をされますが、あくまでも代表例が電動キックボードのような形のものを想定しているという事です。そのため立ち乗りの車両以外にも上記を満たしたものであれば、すべて「特定原付」となります。裏を返すと、電動キックボードは規格に応じてこれまでの一般原付と特定原付の2種類が存在することになりますので注意が必要です。
次に、必要な保安部品について確認していきます。
特定原付は、これまでの一般原付の保安基準項目が基本とされています。
■必要な保安部品、保安基準
・制動装置・・・いわゆるブレーキ、独立2系統、うち片方は電気的なブレーキも可
・前照灯・・・夜間前方 15mの距離の障害物を確認できること
・後部反射器・・・夜間後方 100mから走行用前照灯で照射した場合にその反射光を確認できる
・警音器・・・適当な音響を発する警音器であること(自転車に装着されるベル等でも可)
・尾灯・・・夜間後方 300mから点灯を確認できること
・制動灯・・・昼間後方 100mから点灯を確認できること
・方向指示器・・・前方及び後方 30mの距離から指示部を見通すことができる位置に少なくとも左右1個ずつ取り付けられていること
・スピードリミッター・・・20km/hを超えて加速しない、設定最高速度が2種類以上ある場合、走行中に設定変更ができない
・車体・・・堅牢で運行に十分耐えるもの
・乗車装置・・・乗車人員が動揺、衝撃等により転落又は転倒することなく安全な乗車を確保できる構造
・バッテリーの安全性・・・リチウムイオンバッテリーはPSE マーク等の基準に適合していること
・走行安定性・・・安定した走行を確保できるもの、キックボードなど車輪径が小さい想定のため
・接地部及び接地圧 ・・・道路を破損するおそれのないもの
■不要になった保安部品
・後写鏡…いわゆるバックミラーは通行場所を考慮し不要に
・消音器…電動で小型であることなど、ガソリン原付のように大きな音はでないため
・速度計…20km/h以下と最高速度の制限があるため
■新たに追加された保安部品
・最高速度表示灯・・・昼間前方及び後方 25m から点灯を確認できること、 車道モード:緑色点灯、歩道モード:緑色点滅
外観上で保安基準適否を容易に判断するためと、歩道通行モードであることを外観上容易に判別するために追加されました。
※これまでは識別点滅灯火として議論されてきましたが最終的に最高速度表示灯という名称になったようです。
道路運送車両の保安基準の一部を改正する省令及び 道路運送車両の保安基準の細目を定める告示等の一部を改正する告示について より抜粋
特定原付の特性(小型、低速等)を踏まえ、原付基準に比べ緩和されているものもありますが、基準を満たした状態ですべての保安部品等が取り付けられていないといけません。
これらの全てがしっかり取り付けられ、公道走行可能な特定原付を購入したい場合はどうすればいいのでしょうか? 売り場で、これらの全てを自分でチェックしていくのは難しいですね。
今回の特定原付は、性能等確認制度を作り保安基準適合車両であることが、一般消費者にもわかるようにする仕組みを合わせて作っています。次に性能等確認制度について確認しましょう。
②特定原付の性能等確認制度について
今回、特定原付の保安基準の整備に合わせて、もう1つ新たな制度を創出しました。それが、保安基準適合性等を確認する制度になります。
この制度により、購入する人も認定された特定原付車両であることがすぐにわかるとともに、取締る側の警察官も認定機体であるかないかすぐにわかります。これまで、一般原付の電動キックボード等は違法車両の検挙は取り締まりが難しいといわれていていましたが、今後は取締りも強化されることになります。
具体的にどのような制度なのでしょうか?
認定制度の流れとメリットは?
■国土交通省が能力を審査し、公表した民間の機関・団体等が審査を実施
保安基準に適合しているかの検査にきちんと対応できるかなど、審査基準をクリアした民間の機関・団体等が公表されます。新たにこの認定機関ができることになります。
■認定団体での適合審査に合格すると表示(シール)を機体に貼付
特定原付のメーカー等が認定団体に申請を行い、特定原付の保安基準適合性等を確認してもらいます。
保安基準適合性等が確認された特定原付には特別な表示(シール)の貼付を行い、機体が特定原付の保安基準適合していることがすぐにわかるようになります。今回、このシールについても発表されています。
また合わせて、保安基準適合性等が確認された特定原付は、国交省のホームページで公表されるようになります。
参考▶ 保安基準適合性等が確認された特定小型原動機付自転車の型式
これまでにないまったく新しい車両区分の特定原付の普及に向け、購入する消費者がきちんと保安基準を満たしている車両を選択できるメリットがあります。また、一般原付として利用するはずの電動キックボード等には、違法車両が散見されていました。「見つからないだろう」と違法車両で走行し、歩行者との接触事故などニュースで取り上げられることがありましたが、警察の取締りも厳しくなるため抑止にもつながると思います。
今回の特定原付の保安基準への適用時期は?
上記の図の通り、今回の道路運送車両法は、2022年12月23日に公布施行(一部)されています。
一部猶予期間が設けられますが、新車の特定原付は改正道交法施行日が適用時期と定められています。
また、認定団体は今後国交省の認定を受けてから保安基準適合性等の確認を行うようになるため、公布されてすぐの現時点では保安基準適合車両はありません。また、保安基準等を満たす車両をメーカーも製造していくことになるので、やはり2023年度中は難しいのではないでしょうか。
また、これまでの電動キックボードや電動バイクは、これまで通りの車両区分「一般原付」として継続利用できます。
運用で(自分の操作で最高速度を20km/hしか出さないようにするなど)全ての電動キックボード等が特定原付に切り替わるわけではないので、間違わないようにしましょう。
まとめ
いよいよ特定原付の公道走行が始まりました。
特定原付にまつわる交通ルールや保安基準などを勉強しながら、自分のライフスタイルにあう新しい乗り物を購入したい!という人も多いと思います。
まずは、一般原付にせよ、特定原付にせよ、きちんと決められた保安基準をクリアしたものを購入して、違反をせずに安全に利用するようにしましょう。
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