近年、自転車関連事故の件数は増加傾向にあり、その中でも特に注目されているのが、携帯電話使用等の「ながら運転」と、飲酒運転による事故です。これらの行為は交通事故を引き起こすリスクがあり、特に飲酒運転に関しては、死亡事故や重傷事故に繋がる場合が高いため、事故抑止を目的とした新しい罰則規定が整備されました。
また自転車のように身近で便利な移動手段として、電動キックボードや電動バイクも注目を集めています。
本記事では、自転車罰則強化の背景や、一般原付や特定原付の罰則の具体的な内容について詳しく解説します。
出典:警察庁
自転車のながら運転と酒気帯び運転が罰則強化されたのはなぜ?
自転車は便利な移動手段として多くの人に愛用されていますが、ルールを守らない運転が原因で重大な事故が起こることも少なくありません。警察庁のデータによると、令和5年には、自転車事故で亡くなった人の77.1%、ケガをした人の66.8%が、自転車側にも何らかの法令違反があったと報告されています。法令違反の中でも、運転中にスマートフォンを使った事故が増えており、お酒を飲んで自転車を運転をした場合に死亡事故や重傷事故となるリスクが高い現状があります。
自転車を利用する私たち一人ひとりがルールを守り安全運転を心がけることが重要であることはもちろんのことですが、こうした事故の抑止力として、新しい罰則が設けられました。この罰則強化は、令和6年5月24日に道路交通法の一部を改正する法律として公布され、令和6年11月1日に施行されました。
また、今回の罰則強化の前に、悪質な違反を繰り返す自転車運転者に対して、安全教育を受けることを義務付ける自転車運転者講習制度も2015年6月1日に施行されています。これは自転車の交通違反による事故が社会問題となる中、交通安全を確保するために導入されました。
それぞれの具体的な内容について詳しくみてみましょう。
参考:https://www.gov-online.go.jp/featured/201105/
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/bicycle/cycle_kaisei.html
自転車の「ながら運転」と、その罰則
ながら運転とは、スマートフォンなどを手で保持して、自転車に乗りながら通話する行為、画面を注視する行為を指します。これらの行為は、運転者の周囲への注意力を著しく低下させるため、事故のリスクを高める危険な行為とされています。なお、停止中の操作は対象外です。
現行
都道府県公安委員会規則により、携帯電話・スマートフォンを使用しながら運転が禁止されています。
罰則:5万円以下の罰金(都道府県公安委員会規則)
改正後(令和6年11月1日から)
従来より自動車と原動機付自転車は、道路交通法第71条第5項第5号により運転者の遵守事項としてながら運転が禁止されていました。近年の自転車事故の増加、特に「ながら運転」が原因とされる事故が多発していることを受け、今回の改正により自転車も取り締まりの対象となり、以下の罰則が課されます。
- 主に交通事故を発生させるなど、交通の危険を生じさせた場合
罰則:1年以下の懲役又は30万円以下の罰金
- 上記以外で、手で携帯電話等を保持して、通話や表示された画像を注視した場合
罰則:6月以下の懲役又は10万円以下の罰金
このように、改正後の法律では、自転車の「ながら運転」が道路交通法により明確に禁止され、罰則がより厳しいものとなっています。これにより、自転車利用者の安全意識の向上と、事故防止に向けた取り組みが強化されることが期待されています。
自転車の「酒気帯び運転」と、その罰則
酒気帯び運転とは、血中アルコール濃度が0.3mg/ml以上、または呼気中アルコール濃度が0.15mg/L以上ある状態で車両等を運転することを指します。アルコールの影響で注意力や判断力が低下し、交通事故のリスクが高まる行為です。
現行
道路交通法第 65 条第1項により酒気を帯びた状態で車両等を運転することが禁止されているため、当然お酒を飲んで自転車に乗ることも禁止されています。
しかし、現行法においては、酒気帯び運転の罰則を定めた道路交通法第117条第2項第2号は「軽車両を除く」車両等を運転した場合を対象としており、軽車両に含まれる自転車には罰則がありません。一方で、酒酔い運転の罰則には自転車も対象に含まれており、5 年以下の懲役又は100 万円以下の罰金が課されます。酒酔い運転とは、アルコールによって車両を正常に運転できないいわゆる酩酊状態で運転してしまうことを指し、この「正常に運転できるかどうか」は、アルコールの数値に関係なく、あくまで客観的な判断で決まります。
改正後(令和6年11月1日から)
酒気帯び運転の罰則の対象に自転車が追加されます。お酒を飲んで自転車を運転をした場合に死亡事故や重傷事故となるリスクが高い現状に鑑みて、今回の改正により自転車による酒気帯び運転も罰則の対象となり、以下の罰則が課されます。
罰則:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
以上のように、今回の道路交通法改正により、自転車に対する規制が強化され、安全意識の向上が期待されます。自転車も車両であるという認識がさらに浸透し、飲酒運転による事故の防止が進むことが期待されます。
自転車運転者講習制度
自転車運転者講習制度は、今回の罰則強化よりも前に、自転車の交通ルール遵守を徹底するために導入された制度です。2015年6月1日に施行され、現在も継続しています。
自転車運転者講習の対象となるのは、ながら運転や酒気帯び運転を含む特定の違反行為を3年以内に2回以上繰り返した運転者です。対象となった場合、自転車運転者講習受講命令書が交付され、3ヶ月以内に自転車運転者講習を受けなければなりません。
講習の受講料は6,000円で、受講時間は3時間です。通知を受けたにも関わらず、期間内に講習を受けなかった場合は下記の罰金が課されます。
罰金:5万円
原動機付自転車は従来から罰則がある
原動機付自転車には従来からながら運転や酒気帯び運転が禁止されており、違反すると罰則が適用されます。
最近では、電動キックボードなどの特定小型原動機付自転車や、ペダル付き原動機付自転車など、新しいタイプの電動モビリティを目にする機会が増えました。これらの電動モビリティは、手軽な移動手段として自転車のようなルールで自由に道路を走ってもよいと考えてしまいがちですが、法律上、原動機付自転車として扱われ、道路交通法に従う必要があります。
ルールを守らなければ、自分や周囲の人々に危険が及ぶだけでなく、法律違反として厳しい処罰の対象となる可能性もあります。
これらの「ながら運転」、「酒気帯び運転」の罰則についても詳しく見てみましょう。
一般原動機付自転車(一般原付)の罰則について
一般原付も過去、ながら運転や飲酒運転に対する罰則が強化されています。2019年12月1日に施行された罰則等を具体的に見ていきましょう。
一般原付のながら運転の罰則
- 主に交通事故を発生させるなど、交通の危険を生じさせた場合
罰則:1年以下の懲役又は30万円以下の罰金
反則金:適用なし(反則金制度の対象外となり、全て罰則の対象になる)
- 上記以外で、手で携帯電話等を保持して、通話や表示された画像を注視した場合
罰則:6月以下の懲役又は10万円以下の罰金
反則金:1万2千円
違反点数:3点
一般原付の酒気帯び運転の罰則
一般原付で酒気帯び運転をした場合、子機中のアルコール濃度により行政処分の内容が異なります。
- 呼気中アルコール濃度0.15mg/l以上0.25mg/l未満
罰則:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
行政処分:免許停止 期間90日
違反点数:13点
- 呼気中アルコール濃度0.25mg/l以上
罰則:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
行政処分:免許取消し 欠格期間2年
違反点数:25点
一般原動機付自転車(一般原付)の罰則には、ながら運転や酒気帯び運転に対する厳しい処分が設けられています。ながら運転では、交通の危険を生じさせた場合に最大1年の懲役または30万円の罰金が科され、携帯電話の使用など軽微な違反でも罰金や違反点数の対象となります。酒気帯び運転の場合は、呼気中アルコール濃度により罰則が異なり、0.15mg/l以上では免許停止、0.25mg/l以上では免許取消しなどの厳重な処分が適用されます。
特定小型原動機付自転車(特定原付)の罰則について
特定原付も一般原付同様、ながら運転や飲酒運転に対する罰則が設けられています。特定原付の運転に関する具体的な罰則について見ていきましょう。
特定原付のながら運転の罰則
罰則:1年以下の懲役又は30万円以下の罰金等
特定原付の酒気帯び運転の罰則
罰則:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金等
特定小型原動機付自転車運転者講習制度
2023年7月1日、道路交通法の一部を改正する法律(令和4年法律第32号)のうち、特定小型原動機付自転車の交通方法等に関する規定が施行されました。
その中で、自転車と同様の制度として、特定小型原動機付自転車の違反行為を繰り返す者に対し、安全確保を目的とした「特定小型原動機付自転車運転者講習制度」が設けられ、公安委員会が講習の受講を命じることができるようになりました。なお、受講命令に従わない場合は5万円以下の罰金が科されます。
ペダル付き原動機付自転車や、特定原付も、道路交通法を遵守しよう
ペダル付き原動機付自転車や電動キックボードは、手頃で便利な移動手段として、歩行者、あるいは自転車と同じような意識で運転してしまっている方も多いのではないしょうか。これらの電動モビリティは法律上、一般原付や特定原付として道路交通法上扱われ、安全に運転するためのルールが定められています。他の交通主体と共存するためには、上記でご紹介したような、ながら運転や酒気帯び運転のみならず、信号遵守や走行場所などの基本的な交通ルールを守ることが不可欠です。
違反には罰則があり、また他者や自身の安全を損ねるリスクを高めます。適切なルール遵守と責任ある運転意識を持つことで、安全で快適な交通環境の維持に努めましょう。
まとめ
自転車に対する罰則の強化は、交通事故の増加を背景に、ながら運転や飲酒運転の危険性に対応するための重要な施策です。自転車は手軽な移動手段である一方で、ルールを守らなければ重大な事故につながるリスクがあります。特に、飲酒や携帯電話の使用といった危険行為は、死亡事故や重傷事故を引き起こす可能性が高く、新しい罰則によってこれらの行為に対する抑止効果が期待されています。
また、一般原付であるペダル付原動機付自転車や、特定原付である電動キックボード等に対しては従前から罰則が存在し、安全な運転を心がけ、交通ルールを守ることが求められています。
自転車の罰則の強化が示すように、ルール違反には厳しい処罰が待っています。これを機に、私たち一人ひとりが責任ある運転者としての意識を持ち事故のない社会を目指しましょう。
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