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近年、電動パーソナルモビリティ(以下、電動モビリティ)の普及が進む中で、多くの人が購入時に注目するポイントのひとつが「走行距離」です。しかし、この走行距離の表示方法が製品によって異なるため、ユーザーにとって製品を公平に比較するのが難しいという課題があります。
統一されていない走行距離の測定基準
現在、市場に出回っている電動モビリティは、メーカーごとに異なる条件で走行距離を測定しています。
例えば、
- 平坦な道路での計測か、起伏のある道路での計測か
- 使用する速度や加速の頻度
- 搭載されるバッテリーの容量や充電状態
- 実際の使用状況をどの程度反映しているか
といった条件が統一されていないため、同じ電池容量やスペックを持つ機種でも、カタログ上の走行距離が大きく異なることがあります。ユーザーはこうした情報のばらつきにより、自分の使用環境に合った電動モビリティを選びにくくなっています。
また、特に初心者のユーザーにとっては、走行距離の数字だけでは日常的な使い方における実際のパフォーマンスが分かりづらいという問題もあります。例えば、坂道の多い地域で使用する場合や寒冷地での使用では、カタログスペック通りの走行距離を実現できないケースもあります。こうした実用的な疑問に対応するためにも、統一された測定基準が必要とされています。
日本電動モビリティ推進協会(JEMPA)の取り組み
こうした課題を解決するため、日本電動モビリティ推進協会(JEMPA)が新たに「電費計測試験方法(JEMPA規格)」を提唱しました。この規格は、電動モビリティの走行距離をより公平に比較できるようにするための統一的な基準を提供するものです。
日本国内では、電動モビリティの利用が急速に拡大しており、特に都市部では新たな移動手段として注目されています。しかし、正確な情報に基づいた製品選びができない現状では、市場の成長が阻害される可能性があります。JEMPAは、ユーザーが信頼できる情報を提供することで、電動モビリティの普及をさらに促進しようとしています。
◆日本電動モビリティ推進協会(JEMPA)とは?
日本電動モビリティ推進協会/JEMPA(Japan Electric Mobility Promotion Association)は、日本国内における電動モビリティの普及と利用者の利便性向上を目的として設立された業界団体です。
主な活動内容は以下の通りです。
- 電動モビリティの性能や安全性に関する研究・調査
- 利用者が公平に製品を比較できる統一規格の策定
- 電動モビリティの魅力を伝える啓発活動やイベントの開催
- メーカーや自治体との連携を通じた、電動モビリティの社会インフラ整備促進
特に、電費計測試験方法(JEMPA規格)の策定は、業界全体の透明性を向上させるための重要な取り組みの一つとされています。この規格を通じて、消費者とメーカーの間に信頼を築き、電動モビリティ市場の成長を支えています。
◆電費計測試験方法(JEMPA規格)とは?
JEMPA規格では、以下のようなポイントを基準化しています。
- テストコース条件の標準化
平坦な道路だけでなく、坂道や都市部のようなストップ&ゴーの多い状況を含む。これにより、ユーザーが実際の使用環境に近い条件での走行距離を確認できるようになります。 - 速度の統一
テスト時の速度を低速・中速・高速といった段階に分け、それぞれの平均値を算出。これにより、異なる使用シナリオにおける電動モビリティの性能が明確になります。 - バッテリー状態の明示
バッテリーの充電状態を一定に保ち、満充電からの走行可能距離を計測。また、バッテリーの経年劣化を考慮した測定も行い、長期間使用した場合の性能を予測できるようにします。 - 実用的なシナリオの採用
通勤や買い物など、実際の利用シーンを想定した条件でのテストを実施。例えば、短距離移動と長距離移動の組み合わせや、荷物を積載した状態での走行もテストに含められます。 - 天候や気温の影響を考慮
寒冷地や高温多湿の環境での走行性能をテストし、ユーザーが住む地域に応じた選択ができるよう配慮。
◆JEMPA規格のメリット
この規格が導入されることで、以下のメリットが期待されています。
- 公平な比較が可能に
ユーザーは複数の電動モビリティを同じ基準で比較でき、自分の用途に最適な製品を選びやすくなります。特に、異なるメーカーの製品間での公平な比較が実現します。 - 業界全体の透明性向上
統一基準があることで、メーカー間の競争が健全化し、技術革新が促進されます。また、ユーザーの不満を軽減することで、業界全体の評判向上にも寄与します。 - 消費者の信頼性向上
製品選びの際に「カタログスペックと実際の性能が異なる」という不満が減少します。さらに、製品の選択に迷った初心者ユーザーにとっても、安心して購入できる指標が提供されます。 - 地域特性への対応が可能に
天候や地形など、地域ごとの特性を考慮した製品選びができるようになることで、ユーザー体験の向上が期待されます。
電動モビリティ市場への影響
JEMPA規格の普及は、電動モビリティ市場全体にポジティブな影響をもたらすと考えられます。たとえば、新興メーカーがユーザーにとって魅力的な製品を開発する際にも、統一基準を基に製品の優位性を明確に示すことができます。また、ユーザーが安心して製品を選べる環境が整うことで、電動モビリティのさらなる普及が期待されます。
さらに、国際市場における日本製電動モビリティの競争力向上も視野に入ります。JEMPA規格が国際的なスタンダードとして採用されれば、他国の市場でも日本の電動モビリティ製品が高く評価される可能性があります。
glafitの販売するNFR-01Proでは、このJEMPA規格での走行距離表示を実施しています。
まとめ
電動モビリティの走行距離比較における新しい基準として注目される「電費計測試験方法(JEMPA規格)」は、ユーザーにとっての利便性を大きく向上させる可能性を秘めています。この規格が普及することで、電動モビリティ市場の透明性と信頼性が高まり、より多くの人が電動モビリティの利用を検討しやすくなるでしょう。
さらに、統一基準を通じて、メーカーやユーザー、業界全体にとってのメリットがもたらされることで、電動モビリティの持つ可能性を最大限に引き出すことが期待されています。今後の市場成長の鍵として、JEMPA規格が果たす役割は非常に大きいと言えるでしょう。
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