高齢者による交通事故が社会問題として注目されるなか、報道やSNS上でも「免許返納」という言葉を耳にする機会が増えています。
しかし、運転免許の返納は本人はもちろん、その家族にとっても人生の大きな節目であり、長年車を運転してきた方には決して簡単な決断ではありません。
返納後の生活を考えた際、「買い物や通院はどうするのか」「家族に頼らず生活できるのか」「行動範囲が狭くなるのではないか」といった不安を抱える高齢者の方やご家族も多いのではないでしょうか。
一方で近年は、免許返納後の移動手段が多様化しています。公共交通機関だけでなく、自分のペースで、かつ安全に移動できる新しいカテゴリーの乗り物が登場しているのです。
本記事では、免許返納の手続きから返納後の移動手段まで、返納後の生活をより豊かにするための情報をご紹介します。
高齢者の免許返納が注目される理由

出典:
警察庁「運転免許の申請取消(自主返納)件数と運転経歴証明書交付件数の推移」
運転免許の自主返納は、加齢に伴う身体機能や判断力の低下により運転に不安を感じる人などが、有効期限を待たずに自分の意思で運転免許を返納する制度です。
1998年に開始され、高齢ドライバーの事故などにより社会的関心が高まった2019(令和1)年には、過去最高の約60万件を記録。その後コロナ渦での外出控えなどで減少傾向にあったものの、2024年には5年ぶりに増加して約42万件となりました。2024年の申請件数のうち6割以上は75歳以上が占めています。
交通事故リスクの軽減と社会への影響
年齢を重ねると、視力や判断力、反応速度などが少しずつ低下する傾向があります。これは誰にでも起こる自然な変化ですが、車の運転においては、一瞬の判断の遅れが重大な事故につながる可能性があります。
警察庁の統計によると、全死亡事故に占める75歳以上の運転者の割合は増加傾向にあり、死亡事故の人的要因で最も高い割合を占めているのが、ブレーキとアクセルの踏み間違いなどの「操作不適」です。
リスクが顕在化する前に運転を卒業するという考え方は、必ずしも後ろ向きの選択ではなく、今の時代における一つの「賢明なライフスタイル」として尊重されるべきでしょう。
自分の生活や環境を見直しながら、安全に移動できる方法を考えることが重要です。
参考:
警察庁「運転免許統計」
警察庁「統計表」
早期免許返納のメリット
先述したように、2024年の運転免許の自主返納件数のうち6割以上を75歳以上が占めていますが、年齢別に見ると70-74歳で返納する人の割合が多くなっています。これは、記憶力や判断力を測定する「認知機能検査」の受検が必要となる75歳以上での免許更新を前に、返納を決断する人が多いためとみられています。
「運転ができなくなったから」ではなく、身体能力や認知機能が十分高いうちから免許返納を検討することには、以下のようなメリットがあります。
新しい移動手段の検討や習熟の余裕が生まれる
公共交通機関やモビリティなど「車に代わる足」を試したり、その操作に慣れたりすることができます。余裕があるうちに自分にぴったりの移動スタイルを確立しておくことで、返納後の生活にも無理なく順応でき、生活の質(QOL)を落とさずに済みます。免許返納前に、車と併用する期間を設けるのもひとつの考え方です。
車にかかっていた経済的負担の軽減
車の維持にかかるお金は、ガソリン代や保険料、車検、税金、駐車場代など、軽自動車であっても年間数十万円にのぼります。車を手放してこれらをカットすることで、老後の資金計画にゆとりが生まれます。
家族の心理的安心感
万が一、自動車事故の加害者となって相手の命や生活を奪ってしまった場合、自分自身も大きな責任や後悔を背負うことになります。多額の賠償や社会的な負担も避けられません。運転に不安が出る前に免許を返納することで事故の心配がなくなり、家族も安心して過ごせるようになります。
免許返納の流れと手順
いざ免許を返そうと思っても、手続きが複雑に見えて先延ばしにしてしまいがちですが、免許返納の手続きは意外とシンプルです。
必要な書類と手続きのステップ
免許返納は運転免許試験場、運転免許更新センター、および警察署で行うことができます。手続きに必要なものは有効期限内の運転免許証のみで、費用はかかりません。窓口で申請書類に記入し、免許証を返納すれば完了です。免許証にはその場で穴が開けられ、無効化されます。
手続き場所や受付日時などの詳細は、お住まいの都道府県警察のHP等を参照してください。
参考:
警視庁「運転免許証の自主返納・運転経歴証明書の各種手続」
返納者へのサポート
運転経歴証明書とは
免許を返納した際に、ぜひ併せて申請しておきたいのが「運転経歴証明書」です。これは免許証に代わる公的な本人確認書類として利用できるカードで、免許を自主返納、もしくは失効してから5年以内であれば発行申請ができます。交付手数料は1,150円(2026年3月現在)ですが、マイナンバーカードと一体型のものなど種類によっても異なります。
運転免許を返納した高齢者は、運転経歴証明書を提示することで、自治体や協力企業から「高齢者運転免許自主返納支援事業」としての特典を受けられる場合があります(原則65歳以上が対象)。バスやタクシーの運賃割引や送迎サービス、スーパーでの配送料割引など、地域によって多種多様な優遇措置が用意されています。下記のHPから、各都道府県別の支援施策を紹介しているページにアクセスできます。
参考:
全日本指定自動車教習所協会連合会「高齢運転者支援サイト」
免許返納後の生活交通手段
免許を返納する際、多くの人が気にするのが「移動手段」です。これまで車で行っていた買い物や通院、趣味の外出などが不便になるのではないかと不安に感じる方も少なくないでしょう。
しかし現在は、車以外にもさまざまな移動手段があります。それぞれに特徴やメリット・デメリットがあるため、自分の生活スタイルに合ったものを選ぶことが大切です。
公共交通機関の活用
電車やバスなどの公共交通機関は、免許返納後の主要な移動手段のひとつです。自分で運転する緊張感から解放されるという大きなメリットがあります。また、定時性があるため予定が立てやすく、とくに都市部では路線が充実しているため、車がなくても移動できる環境が整っています。自治体によっては高齢者向けの運賃割引制度などもあります。
一方で、
- 駅やバス停までの距離が遠いと不便
- 地域によっては本数が少ない
- 荷物が多いと移動が大変
といった課題もあります。
そのため、他の移動手段と組み合わせて利用する機会も多くなるでしょう。
シニアカー
シニアカーとはハンドル形の電動車いすのことを指し、高齢者の近距離移動をサポートする乗り物です。多くは四輪タイプですが三輪のものもあり、道路交通法上は「歩行者」として扱われるため、歩道を走行します。
速度は最高で時速6km(早歩き程度)とゆっくりですが、安定感があって操作も簡単なため、運転に不安がある人でも比較的安心して利用できます。積載性を確保したモデルも多く、自宅周辺の買い物や散歩などには便利な移動手段です。
ただし、
- 長距離移動には向かない
- 段差や坂道で不安定になることがある
- 自転車などに比べ小回りが利きづらい
といった注意点もあります。
電動アシスト自転車
電動アシスト自転車とは、走行中にペダルを漕ぐ力を電動モーターが補助(アシスト)する仕組みの自転車で、免許不要で運転できます。ただし、法律で駆動補助機付自転車としてアシスト比率等の基準が詳細に定められており、これを超えるものは「ペダル付き電動バイク」に該当し、免許が必要になることに注意が必要です。
坂道でも楽に走れるため日常の移動に便利で、買い物や通院、駅までの移動など、車の代わりとして使う人も増えています。
ただし、
- ペダルをこぐ体力が必要
- 荷物が多いときなどバランスを崩しやすい
- 年齢とともに乗り降りが大変になる場合もある
といった点には注意が必要です。
参考:
警察庁「電動アシスト自転車」と「ペダル付き電動バイク」の違いについて
特定小型原動機付自転車
近年、新しい移動手段として注目されているのが特定小型原動機付自転車(以下、「特定小型原付」)です。特定小型原付は2023年7月の道路交通法改正により新設された電動モビリティで、16歳以上なら免許不要で乗ることができるのが最大の特徴です。
キックボードタイプのほか自転車のような着座タイプもありますが、電動アシスト自転車との大きな違いは、アクセルをひねるだけで進むため漕ぐ必要がない点です。コンパクトで取り回しがしやすく、アクティブシニア層の新しい移動手段としても期待されています。
参考:
警察庁「特定小型原動機付自転車に関する交通ルール等について」
特定小型原付について
特徴や法的規制
特定小型原付は原動機付自転車の一種に分類されます。主な特徴と運転ルールは以下のとおりです。
- 16歳以上なら免許なしで運転可能
- 最高速度は時速20km
- ナンバープレートの取得と自賠責保険加入は義務
- ヘルメット着用は努力義務
- 原則的に車道通行
道路交通法上の分類では電動アシスト自転車、ペダル付電動バイク双方とも異なるため、注意が必要です。
参考:
自転車みたいなバイクとは?特定小型原動機付自転車の基本知識と選び方
アクティブシニアにおすすめする理由
交通ルールを熟知している
特定小型原付は16歳以上であれば免許不要で運転できますが、道路交通法に基づいた交通ルールを守って利用する必要があります。その点、これまで長く自動車を運転してきた人にとっては、道路状況の読み取りやルールがすでに身についているという点が大きな強みになります。
「どこが危ないか」「車のドライバーや歩行者はどう動くか」を予測できる熟練のスキルは、安全な走行において最大の武器といえるでしょう。
行動範囲が広がりQOLが上がる
免許を返納すると、「外出の機会が減るのではないか」「買い物や通院が不便になるのではないか」といった不安を感じる人も少なくありません。しかし漕がなくても進む特定小型原付であれば、膝が痛い、体力に自信がないという方でも無理なく運転できます。
移動への心理的ハードルが下がることで外出の機会が増え、アクティブな生活を維持しやすくなります。行きたい時に行きたい場所へ行ける自由が保たれることは、QOLの向上に直結します。
glafitの特定小型原付
私たちglafitは、安全・快適で楽しい移動体験ができる電動パーソナルモビリティを提供しています。幅広い年代のユーザーから支持を集める「NFR-01」シリーズのほか、現在は三輪や四輪の特定小型原付の開発にも力を入れています。
人気の電動サイクル「NFR-01」シリーズ
電動サイクル「NFR-01」シリーズは、見た目は自転車のようなのに、アクセルをひねるだけでビュンと進む、着座型の特定小型原付です。乗り降りがしやすく足つきが良いので転倒のリスクが軽減され、低重心のため安定感も抜群です。サドルやハンドルの高さは身長に合わせて調整でき、一家に一台あれば家族で共有ができます。
コンパクトな車体は取り回しが良く、折り畳めるため玄関などの限られたスペースにも収納しやすいのも魅力。バッテリー部分だけを取り外し、家庭用コンセントで充電が可能です。
「NFR-01」シリーズは、ハイスペックモデル「NFR-01 Pro⁺」と、エントリーモデル「NFR-01 Lite」の2タイプで展開しています。
走りもデザインもプレミアムな「NFR-01 Pro⁺」
2024年度グッドデザイン賞を受賞した「NFR-01 Pro⁺」は、クラウドファンディングサービスMakuakeにて、特定小型原付のプロジェクトとして初の1億円超えを達成。パワフルな登坂性能とIoT連携が特徴で、業界トップクラスの人気モデルです。
▶ 製品詳細:https://glafit.com/products/nfr/nfr-01-pro/
家族みんなで乗れる令和のファミリーサイクル「NFR-01 Lite」

2025年3月に新発売された「NFR-01 Lite」は、電動サイクル初心者にも扱いやすく、日常使いに適したスペックを備えました。一家に一台欲しくなる、令和のファミリーサイクルです。
▶ 製品詳細:https://glafit.com/products/nfr/nfr-01-lite/
未来を見据えた三輪・四輪の特定小型原付を開発中

(写真左)足上げ動作が難しい高齢者にも優しい着座ステップスルータイプの「P.E.T」 (写真右)アウトドア用途を意識した「NFR-T1 Pro⁺」
glafitでは現在、三輪・四輪タイプの特定小型原付の開発も進めています。「Japan Mobility Show 2025」の展示では、前二輪の三輪型特定小型原付「P.E.T」「NFR-T1 Pro⁺」、さらに免許返納後の移動手段として注目される四輪型特定小型原付「WAKUMOBI」をコンセプトモデルとして紹介。来場者から多くの関心を集めました。

大阪・関西万博でも展示・デモ走行を行った「WAKUMOBI」
特定小型原付の”16歳以上であれば免許不要”で乗れるという利点を生かしつつ、多様化する生活スタイルや、免許返納後の高齢者が抱える「移動手段不足」という社会課題に応える未来のモビリティ像を、今後も提示していきます。
参考:
【Japan Mobility Show 2025レポート】 未来の“誰もが乗れる”電動パーソナルモビリティを初展示
大阪・関西万博で、WAKU MOBI(四輪型特定小型原動機付自転車)の最終屋外デモンストレーションが決定
まとめ
車の免許返納は、決して「移動の制限」ではありません。自分に合った新しい移動スタイルにシフトするための、ポジティブなプロセスとして考えることができるでしょう。
視力や体力、判断力に余裕がある「元気なうち」に次の相棒となる乗り物を探し始めることで、無理なく生活を移行でき、外出機会が維持されQOLの向上につながるというメリットがあります。
乗り物が多様化するなか、免許不要で運転できる特定小型原付は、社会課題の解決という側面でも期待を集める新時代のモビリティであり、返納後の移動手段のひとつの選択肢といえるでしょう。誰もが何歳になっても、安全かつ楽しく移動できる社会を実現したいものです。
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